No.523 2003/8/2 越前海岸 ログ前(ビーチ)1本目
天気:快晴 水温:23℃
突然思い立って、北陸の越前に行ってきました。
自宅から約5時間30分、高速道路と一般道路を普通に走って夜中の1時半に越前のダイビングセンターログに到着です。朝まで車の中で寝ます。
7時に眼が覚めると外は快晴の良い天気です。海も静かでウミウシ探しに期待が膨らみます。
受付を済ませて早速エントリーしました。
春先の越前は海藻のカジメがが凄いらしいのですが、夏はまったくありません。
岩肌にはミルやカニノテ、ウミウチワ、アオサなどの海藻がところどころ生えていていかにもウミウシがいそうな感じです。
先にエントリーして妻が来るのを待っている間、足元のミルを見ていたら、ミドリガイの仲間がいるではないですか。
早速撮影します。はじめはこの時期の越前に多い「アズキウミウシ Elysia amakusana」かと思いましたが、外套部のフチの形状が明らかに異なります。
後で調べたところどうもこのウミウシは「クロミドリガイ Elysia atroviridis」になるようです。
妻がエントリーしてきたので移動します。
ログ前のポイントは若干オーバーハング状になった岩の壁が多数あるのですが、まずはその中の一番お気に入りの壁に向かいます。
壁の場所はエントリーした場所のすぐ近くの水深5mほどの場所です。向かう途中に「アズキウミウシ Elysia amakusana」がいました。今年の越前でもこのウミウシは多いようです(安心しました)。
壁に取り付いて、まず目に付いたのは「クロヘリアメフラシ Aplysia parvula」が小石の上で立ち上がりユラユラしているシーンです。
たまに見かけるのですが、どうやらこれは海藻に擬態しているようです。注意してみないと茶色い海藻と見間違えます。クロヘリアメフラシも考えましたね。越前の個体は外套部のフチが赤茶色でとてもキレイですが、これも海藻に擬態することと関係があるのかもしれません。
ざっと壁を眺めると「シロウミウシ Chromodoris orientalis」がたくさんいます。2001年の越前では、黄色の色素が少ないと思われる、妙に白っぽい個体もいたのですが、今回の個体は黄色い色素が濃く鮮やかな色彩に個体ばかりでした。
壁をなめるようにじっくり見ていくと小さな「イナバミノウミウシ Eubranchus inabai」が多数見つかります。昨年の7月にも多くの個体を観察していますが、今年も変わらないようです。
イナバミノウミウシを撮影していると妻が見慣れない4mm位の小さなウミウシを見つけました。
撮影して確認してみましたが、小さい上に突起部が長く今ひとつピントが合いません。まずは、何枚か撮影して後で調べることにします。
宿に帰ってからこのウミウシの画像をチェックしたところ、どうもこのウミウシは「ミサキヒメミノウミウシ Eubranchus misakiensis」のようです。
ラドマン先生のサイトに記載されている平野先生の個体のボディ部には、木の枝のような茶色い模様が縦に入っています。
今回の越前の個体も私が撮影した画像にはこの模様があまり鮮明に写っていなかったのですが、妻が白い軍手の上で撮影した画像にはハッキリと、あまりにもハッキリすぎる位に写ってました。
そのほか、若干の色彩の濃さやボディ部全体に現れる茶色い点模様の密集度など、違いはあるのですが、現在のところ「ミサキヒメミノウミウシ Eubranchus misakiensis」が一番近いようです。
しかし、私の写真は今ひとつでした。もっと粘ればよかったのですが、すぐ隣でイナバミノウミウシが、「早く撮って〜」といわんばかりのポーズでこっちを見ていた(ようなきがした)ので、思わずそっちにいってしまいました。
小さな「キリヒメミノウミウシ Cuthona puellula」も妻が見つけてました。この場所では去年も見ています。
その後は、「サガミイロウミウシ Hypselodoris sagamiensis」、「オトメウミウシ Dermatobranchus otome」、「ユビウミウシ Bornella stellifer」、「オトメミドリガイ Elysia obtusa」、「ウスイロウミウシ Hypselodoris placida」など、この時期、この場所では一般的なウミウシを観察しました。
岩壁には短い「シロガヤ」も所々生えているのですが、そのような場所では「ゴシキミノウミウシ Cuthona diversicolor」も多数見つかりました。私は、大瀬崎や真鶴の磯でよく見ているのですが、妻はあまりなじみが無かったようで喜んでました。
小さな、3mmも無いような「フジエラミノウミウシ Cuthona ornata」を撮影したあたりで、潜水時間が2時間を過ぎたので上がることにしました。
戻る途中、岩肌の海藻の中に「コモンウミウシ Chromodoris aureopurpurea」と「アオウミウシ Hypselodoris festiva」がいます。壁にもアオウミウシは沢山いたらしいのですが、なぜか私は見てませんでした。
越前 ログ前(ビーチ)で出会ったウミウシたち(1本目)
クロミドリガイ Elysia atroviridis ----- 2個体
アズキウミウシ Elysia amakusana ----- 多数
クロヘリアメフラシ Aplysia parvula ----- 3個体
シロウミウシ Chromodoris orientalis ----- 多数
イナバミノウミウシ Eubranchus inabai ----- 多数
ミサキヒメミノウミウシ Eubranchus misakiensis ----- 1個体
キリヒメミノウミウシ Cuthona puellula ----- 1個体
サガミイロウミウシ Hypselodoris sagamiensis ----- 1個体
オトメウミウシ Dermatobranchus otome ----- 3個体
ユビウミウシ Bornella stellifer ----- 2個体
オトメミドリガイ Elysia obtusa ----- 多数
ウスイロウミウシ Hypselodoris placida ----- 多数
ゴシキミノウミウシ Cuthona diversicolor ----- 多数
フジエラミノウミウシ Cuthona ornata ----- 1個体
コモンウミウシ Chromodoris aureopurpurea ----- 1個体
アオウミウシ Hypselodoris festiva ----- 多数
No.524 2003/8/2 越前 ログ前(ビーチ)2本目
天気:快晴 水温:23℃
2本目は、1本目に重点的にウミウシを探した壁と向かい合わせの反対側の壁に行ってみました。
ここも若干オーバーハング気味になっているのですが、冬の荒波の間、波が当たりやすいのか海藻や海綿が少なめです。
ウミウシも少なめですが「ウスイロウミウシ Hypselodoris placida」、「オトメミドリガイ Elysia obtusa」、「メリベウミウシ Melibe papillosa」がいました。
このメリベウミウシは全体的に透明感が高く背面突起の部分に青い模様が現れるなど「ちょっと変わっているな」と思ったのですが、全体的なフォルムは「Melibe papillosa」と一致するようです。もしくは「Melibe spp.」としているサイトや図鑑もあるかもしれません。
壁の向かいにある、日の当たった岩場では「クロヘリアメフラシ Aplysia parvula」が交接中のようです。
しかし、後ろ側の個体の様子がちょっと変です。体後方の外套幕がめくれてしまっていて、なにやら白いものが出てます。
以前、西伊豆・浮島 サンセットリゾートの忍沢さんに、同じような状態の「アメフラシ Aplysia kurodai」の写真を見せていただいたことがあります。そのときは「何でしょうね〜」で終わってしまったのですが、今回の個体をよく観察してみると、どうも鰓のように思えてしかたがありません。詳しいことはまだ調査していないのですが、後日時間があるときに調べてみようと思います。
この交接中のすぐ近くにいた個体も同じような状態で鰓のような白い物体が出ていました。この物体は軽く触ると引っ込むのですが、しばらくするとまた出てきます。
追記:
このクロヘリアメフラシの白い物体ですが、ウミウシ学(平野義明 著 東海大学出版会)にアメフラシの解剖図があったのを思い出して確認してみました。その結果、どうやらこの物体は「鰓」のようです。
私がクロヘリアメフラシの観察に夢中になっている間、妻は何をしているのかな?と妻の方を見てみると、なんと大きな「アメフラシ Aplysia kurodai」にアオサのような海藻を餌付けしてるではないですか!?
餌付けしながら「かわいいぃ〜」となでてましたが、なついているというか、おかまいなしというか、もくもくと妻の手から海藻を食べてました。
英語圏では「Sea Hare(海うさぎ)」と呼ばれているアメフラシですが、なるほど、たしかに、こうして海藻を食べている姿は「うさぎ」のようです。思わず飼いたくなってしまうほどかわいかったです。しばらく妻と二人でながめてました。
こちら側の壁はウミウシが少なめなようなので、1本目に潜った壁に移動することにしました。
移動の途中、普通の石の上で「ゴマフビロウドウミウシ Jorunna parva」を見つけます。初めて越前を潜ったときにもこのウミウシがいたのですが、越前の個体はなんとなくですが、個性が強いというか、模様がハッキリしているように感じます。
触角の周りの突起がハゲたような部分が、天才バカボンに出てくるおまわりさんの目みたいで笑えます。
壁に移動する途中、小さなオーバーハングの壁を見つけてウミウシを探してみると、やはりまず目に付くのは「シロウミウシ Chromodoris orientalis」と「アオウミウシ Hypselodoris festiva」です。
「これは、他のもいるな」と思い探してみると、「ヒブサミノウミウシ Phidiana indica」、「アズキウミウシ Elysia amakusana」、「フタスジミノウミウシ Facelina bilineata」が見つかりました。ミノ系も多いようです。
途中寄り道が多くて、1本目に潜った壁に移動したときにはかなり時間が経ってまいました(移動距離はほとんどなく、ほぼ目視できる場所なのですが・・・)。
明日もあるので、今日のところは1本目に見たウミウシたちを再度確認して上がりました。
越前 ログ前(ビーチ)で出会ったウミウシたち(2本目)
ウスイロウミウシ Hypselodoris placida ----- 多数
オトメミドリガイ Elysia obtusa ----- 多数
メリベウミウシ Melibe papillosa ----- 1個体
クロヘリアメフラシ Aplysia parvula ----- 3個体
アメフラシ Aplysia kurodai ----- 1個体
ゴマフビロウドウミウシ Jorunna parva ----- 1個体
シロウミウシ Chromodoris orientalis ----- 多数
アオウミウシ Hypselodoris festiva ----- 2個体
ヒブサミノウミウシ Phidiana indica ----- 2個体
アズキウミウシ Elysia amakusana ----- 多数
フタスジミノウミウシ Facelina bilineata ----- 2個体
キリヒメミノウミウシ Cuthona puellula ----- 1個体
オトメウミウシ Dermatobranchus otome ----- 3個体
イナバミノウミウシ Eubranchus inabai ----- 多数
ゴシキミノウミウシ Cuthona diversicolor ----- 多数
ユビウミウシ Bornella stellifer ----- 2個体
クロミドリガイ Elysia atroviridis ----- 2個体
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